生クリームに塊?使えるの?固まりを食べても大丈夫?

無添加の生クリームを開封した時、特に賞味期限が近いとパックをあけたところにバターのような塊があったり、膜のように固まっていたことありませんか?

クリームにできた塊の写真

パックのふちに出来た少しねっとりした白いこれ!ふちから剥がれていてボウルに開けたときにみつかることもしばしば。

固まっているように見えるので使ってもいいのか不安になるかもしれません。でも実はこれが添加物の入っていない証でおいしさの元だったりします。

今回はこの塊の正体について書いてみます。

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塊の正体とは

パックをあけたときに見えるバターのような塊や周りが固まったもの。

これ実はほとんどバターなんです。

この塊は無添加の生クリームでのみ発生します。植物性や添加物の入ったタイプの乳脂肪クリームでは発生しないので、いつも植物性や乳等を主要原料…と書いてあるタイプのクリームを使っている方は「腐ってる!?」と驚くかもしれませんね。

なぜこうなるの?

クリームの上に脂肪が固まっている=脂肪が浮いてきているということ。

イメージとしてはこんな感じ。

クリームの固まりができるイメージ図

青丸が水分、黄丸が乳脂肪だと思ってください。最初は均一だったものが時間の経過によって徐々に上に浮いてきてしまっているのです。

牧場で飲む牛乳はこのホモジナイズという工程が無いので一口目が「濃い!」と感じる方もいると思います。実はこれと同じ現象がクリームでも起こっているのです。

たまに振られて中で乳脂肪同士がぶつかってホイップされたものや固まったものという表現をされているサイトもあるようですが、理論的な部分からいうと少し違います。

いくつかそう言える理由を書いていきます。

ノンホモ牛乳も放っておくとクリームが浮きますが、定期的に攪拌すると脂肪分が浮いてきません。牛乳もクリームも脂肪分が多いだけで根本的には同じです。

ノンホモ牛乳はホモジナイズ工程(脂肪球を小さく均一にする工程)を経ていないから浮くんでしょ?というご意見もあるかと思いますが、あくまで脂肪球が大きいと浮きやすいだけで全く浮かないことはありません。

特にクリームの脂肪球は一般的に牛乳よりも大きいと言われており、ノンホモ牛乳と同じ理論で浮いてきます。(実際にクリームを取り扱う会社の方と話した時に、クリームはホイップしやすいよう大きめの脂肪球にしていると言っており浮きやすいと言っていました)

実際に均質圧力(脂肪球の大きさ)と脂肪球の浮上速度の関係についての論文でも同様の記述があります。

均質圧力が高く,脂肪球が細かくなる程,脂肪浮上率(クリーミング)は減少し,クリームラインの形成が抑制される傾向にあった.脂肪浮上率(クリーミング)に及ぼす脂肪球平均粒子径のこのような影響は,保存日数が長くなるほど顕著になった.

出典元:岩附慧二・松井洋明・溝田泰達・外山一吉・住正宏・冨田守: UHT牛乳の物理化学的性状および官能特性に及ぼす均質圧力の影響,食科工,48, 126 (2001).

このことからも脂肪球が大きいクリームは脂肪が浮きやすいことがわかります。

また、塊を実際に見ればわかりますが、振ってホイップしたものと形態が違いますし、ホイップが進むのにどれだけ振らなければいけないかはバター作りで実感してもらえるかと思います。(ホイップの状態にするもの結構疲れます笑)

製造元からお店まででそこまで振られることはないでしょうし、持って帰るときもバター作りのような工程が進むほど振動が多いとは考えづらいです。

ただ、一つ注意点は温度が高い状態で振られてしまうと固まってしまう可能性があります。
(厳密には温度が高い状態で振られた後に冷却された場合に固まります)
これについてはこの記事でも解説しているので参考にしてください。

ここから少し難しい話になるので使えるかどうかだけ知りたいだけの方は下に全力スクロールしてください笑

脂肪球が浮く速度を求めるストークスの法則という式がこちら

V=2r×(ρsーρ)g/9μ

V=脂肪が浮いてくる速度、r=脂肪球の大きさです。

他はとりあえず考えなくて良いので少し省いて考えます。

V=2r

 この式を見ていただければ分かる方もいるかもしれませんが、脂肪球が大きいほど脂肪が浮いてくる速度も速いんです。(脂肪の大きさが1だと速度が2になる、大きさが2だと速度が8になる)

また、わかりやすくするために少し省いてしまった部分ですが、溶媒(水分)の粘度が小さいほど浮くスピードが速いと言われています。クリームでいうと、より粘度の低い低脂肪のクリームほどこの浮くスピードが速くなります。(塊ができやすくなる)

さて、ここまでで、脂肪球の上昇(クリームの固まり)をホモジナイズ(脂肪の大きさを小さくそろえる)という工程で防げるということが分かりました。

気付いている方もいるかもしれませんが、生クリームといっても全然塊ができないものと、できやすいものがありますよね?

実はもう1つ簡単にこの脂肪上昇を防ぐ方法があります。それが無添加の生クリームに入っていない「乳化剤」、「安定剤」というものです。

植物性や乳等を主要原料…とかかれたタイプは「乳化剤」、「安定剤」が入っているのでこの現象が起きないのです。詳しくはこちらの記事で説明しています。

塊ができるのは添加物の入っていない証と言ったのはこのためです。無添加製品はできるだけホモをかけて塊の生成を抑えていますが、添加物の力を借りないと完全に抑えることはできないのです。

普通に使えるのか

パックについている塊=脂肪が浮いて固まったもの=バターのようなもの

無添加生クリームを販売している乳業メーカーさん2社の回答でも大さじ1、2杯程度、2cm程のものが2~3個程度の固まりであれば、潰して混ぜ込んで使用可能と言っておられます。

ただ、匂いや風味を確認してから使うようにし、また賞味期限を切れたもの、一度開封して置いておいたものは塊があった場合やめたほうがいいかもしれませんね。

実際に塊を潰してホイップしてみた

中身をスプーンでこそいでボウルに移し、液体と塊部分をスプーンでつぶしてなじませてから実際にホイップしてみました。

ダマのように残るのでは?と思っていたのですが、塊が無い物と比べたところ、味も出来上がりにも、差は感じられませんでした。

塊ができにくくするには?

今まで説明してきた理論と私の経験上、塊ができてしまうのは自然現象なので、ある程度は割り切るしかないと思います。(どうしても嫌なら乳化剤などが入ったものを使う)

ただ、一つおすすめの方法があります。

私はちょっと使うのが先のクリームは軽く振って脂肪が浮くのを遅らせるようにしたりしています。(少し混ぜることで再び均一にして浮かせないようにする)

その為かほとんど固まりが多くて使いづらいという現象は起きたことがありません。
買いだめしている方はおすすめです!

まとめ

パックに付いた塊や部分的に固まったものはバターのようなもので、無添加クリームには添加物が無いのでこうなってしまう。

未開封の期限内で風味に異常がなければホイップ用途でも潰して混ぜ込んで普通に使える。

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