焼き菓子の中でも人気が高いフィナンシェ。
以前失敗しにくいレシピをご紹介したのですが、ポイントについて書くとすごく長いレシピになるので…笑
相当な回数フィナンシェを作ってきてわかった失敗しやすいポイントとコツについて詳しく解説していきます。
実際に良くない工程を行うとどうなってしまうのか写真付きで見ていきましょう。
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作る際に最も注意すべきこと
まずフィナンシェを作るうえで、私が考える最重要な注意点を見ていきます。
ただ、レシピによっては当てはまらない場合もあるので、あくまで私が公開したこちらのレシピでの注意点であることをご理解ください。
(でも、多くのレシピに共通する部分はあると思います)
よくある失敗として、油浮きをする・ぱさぱさ・油っぽいなどは作る工程のどこかで失敗しています。
主なポイントとなるのは温度です。
フィナンシェは乳化剤の役割を果たすもの(卵黄など)がないため、乳化(油と水が混ざり合った状態)を保つのが難しい生地であることを理解する必要があります。
要は不安定なので、温度と生地の取り扱い次第ですぐに分離してしまうというのを覚えておいてください。
では、具体的にどの温度を気をつければいいのでしょうか?
失敗しやすいポイント
焦がしバターの温度
フィナンシェを作る際、まず工程として焦がしバターを作ると思います。
この時の温度が高すぎても低すぎてもだめです。
ベストな温度は60℃前後。
温度計がない方は難しいかもしれませんが、普通にしばらく触っていられる状態の場合は冷ましすぎです。
特に焦がしバターをろ過する場合は器具に熱を急激に持っていかれるので要注意。
もしも冷ましすぎた場合は再び温めて50℃前後まで上げるようにしてください。
生地の温度
焦がしバターの温度は60℃前後がいいといいましたがこれは卵白の凝固点が約60℃であるためです。(合わせることで60℃未満になる)
生地と合わせて混ぜ終わった後にまだほんのり温かみがある程度が乳化(卵白の水分とバターが分離しない状態)を保ちやすい状態です。
卵白と砂糖を混ぜ合わせる際は、湯せんで温めなから作業してください。
というのもせっかく焦がしバターを60℃にしても加える先の生地がすごく冷えていた場合、最終的な出来上がりの生地は冷たくなってしまいます。
この状態で混ぜてしまうと乳化が壊れて、焼いたときに油浮き(分離)を引き起こしてしまいます。
冷えた状態で混ぜる(衝撃を加える)と高確率で乳化が壊れて分離します。
これがあえて生地を冷まして焼いたものとの比較です。
見た目に関しても表面が粗いのがわかります。
こちらが断面。
きれいに焼けたものはギュッと詰まってしっとりしています。
一方で分離したものは隙間が大きく、油がにじんできています。
二つに割った時も乳化が壊れた方はぐにゃっと硬く、噛むとキシキシして油がにじみでる感じでした。
焼いているときも乳化が壊れたものはすぐわかり、油が出てしまうため、まるで揚げ焼き状態になっていました。
天板にも型からあふれた油でべっとりでした。
もし生地が冷えてしまったら?
では、生地が冷えてしまったらもう失敗なのでしょうか?
実はもし冷えてしまった場合でも湯せんなどで温度をあげてゆっくりと優しく混ぜ合わせると再び乳化します。
ただ、再度混ぜることでグルテンができやすくなりますし、完全に乳化が戻るかは保証できないので最初から温度管理をしっかりするようにしてください。
(私が試した限りでは冷えた後に湯せんで温度を上げれば分離しませんでした)
型に入れる工程
型に流しいれる際に、絞り袋が非常に便利なのですが、この絞り袋を使う場合は少し注意が必要です。
いくら温度を保っていても、絞り袋で絞っている最中に生地には物理的な衝撃が加わっています。
特に最後の最後で出てくる生地は要注意です。
衝撃を受けて乳化が壊れている場合が多いので、この部分の生地は味見用の型に入れてしまうか、できるだけ目立たないよう型の端に入れた方がいいです。
あえて生地の真ん中に入れてみたものがこちら。
少しわかりにくいですが通常のものと比べると最後の生地を乗せた部分が油浮きを起こし変な模様ができています。
この写真は一部なので食感や味には影響が少ないかもしれませんが、例えば最後の部分を頑張って絞って1つにすべて流しいれた場合、そのフィナンシェは高確率でぱさぱさになってしまいます。
生地は冷やす?冷やさない?
ここはパティシエの方でも意見が分かれるところ。
主に冷やす目的は小麦粉と卵白を混ぜた際にグルテンが出てしまい、ふわっと感やしっとり感が失われ、硬くなってしまうことを嫌ったためかと思われます。
レシピによっては少し膨らませたいために休ませる方もいるかもしれませんね。
私の考えとして、自分のレシピ特性を完全に理解しているようなプロ以外では「休ませない」が失敗の少ない方法だと思います。
先ほども言いましたが、冷えた状態で混ぜたり絞り袋で型に絞り入れたりは最悪の行動だと思っています。
休ませた生地を型に入れてしまうとその衝撃で乳化が壊れ、焼き上がりが残念なことになることが考えられます。
ただ、どうしても生地を休ませたい方は1つ方法があります。
それは、温かい状態で型に入れ、型に入れたまま休ませる方法。
これなら冷えた状態で衝撃が加わることはなく、乳化を保ったまま焼くことができます。
ただ、ここからはあくまで私の意見。
確かに小麦粉と水分が合わさって捏ねるとグルテンができますが、このグルテンの生成は油分があることで阻害されます。
もともとアーモンドパウダーには油分があることやその後のバターである程度阻害できるのではないかと考えています。
(このグルテンを出さないようにする部分は後ほどのコツでご紹介します。)
ですので、乳化が壊れて分離するリスクをとってまで休ませなくてもいいのでは?と思います。
まあ、この部分はそれぞれレシピの作り手さんの考えがあると思うので全く否定はしません。
きれいな形に焼きあがらない
失敗する方の中には、フィナンシェが浮いてしまった・底上げやへこみができてしまったという方がいるかもしれません。
これは所説考察がされていますが、混ぜすぎてグルテンができてしまったこと、焼く温度が高すぎることが考えられます。
焼く温度に関しては、各オーブンによって癖があるので何とも難しいところですが、最初は温度を少し下げて、その後温度を戻してみるというように調整が必要かもしれません。
本当は下火を弱くするのがいいのですが、家庭用オーブンではそういった調整ができないので、全体温度を下げる→色が変わってきたタイミングで温度を戻すがいいと思います。
下げる温度としては10℃~20℃くらいにしてください。
(本当は試して何度がいいかオーブンによって確かめた方がいいです)
ただ、トータルの焼き時間は長くなります。
作り方のコツ
失敗しにくい方法にもつながりますが、私がおすすめする作り方のコツをご紹介します。
焦がしバターの作り方で風味UP!?
レシピによっては焦げをろ過する場合と、ろ過せずに加える場合があります。
この焦がしバターで生じる焦げ(沈殿物)はバターに含まれる無脂乳固形分です。
無視乳固形分についてはこちらで詳しく解説しています。
これは旨味成分ですので、本来は加えた方が風味が向上します。
ただ、焦がしバターを作るときに、沈殿物が焦げないことが条件。
もし無視乳固形分もすべて加える場合は、沈殿物が少し茶色くなったくらいで火を止め、あとは余熱で火を入れるといい感じになります。
(もし焦げてしまった場合は苦みが出るのでろ過してください。)
もちろん早めに火を止める分、ほんの少し焦がしバターの風味は減るかもしれませんが、十分特有の香りは出るので人の好みかなと。
あとは、無視乳固形分を入れることで焼きあがったものにも見える形で残ります。
写真の粒のような感じで、茶葉を入れたような出来上がりになる。
こういうのじゃなくてきれいな見た目がいいんだ!という方は濾してから使用してくださいね。
焦げをろ過する派、焦がし過ぎずにすべて入れる派でどんな特徴があるかは後ほどのコツでご紹介します。
混ぜる時の工夫でグルテンの生成を抑える
底浮きやへこみ、硬い食感の原因になるグルテンですが、できにくくするポイントがあります。
それは、まだ粉っぽさが少しある状態で、焦がしバターを少し混ぜ込むこと
卵白と薄力粉を混ぜ合わせる際に、よく混ぜてしまうとグルテンができます。
先ほど上でも言ったように油分はグルテン生成を阻害するため、粉っぽさが残る段階で少しだけ焦がしバターを先に加えます。
均一になったら残りのバターを加えてください。
まとめ
長くなりましたが、私が今までの経験や知識から失敗しやすいポイントやコツについてご紹介しました。
作り方のコツを温度以外の部分もまとめると
・焦がしバターを作り濾して少し冷ますが冷ましすぎない。 (60度くらい)
・卵白と砂糖を湯せんで温めながら泡立てないように混ぜる。
・粉類をふるい、2回に分けて加えて混ぜる。
・少し粉っぽい段階で少しだけバターを加えて混ぜる。
・均一になったら油系を少しずつ加えながら混ぜる。
・混ざったらヘラでボウルに生地を擦りつけ気泡を無くす。
・焼きあがったらすぐに型から外し、ケーキクーラーなどで冷ます。
・寝かせる時はジップロックなどチャック付きの袋に入れて保管します。
・ラッピングする場合は冷めてから個包装して保管してください。
うまくできずに悩んでいる方へ、少しでも助けになれば幸いです。
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